先日、自宅からほど近い中型のショッピングモールへ出掛けた。
BOOKCAFEや雑貨店、ソウルフードの寿がきや(えっ?)もあり
なかなか楽しめるこのモールは、早速お気に入りの場所の一つとなった。
買い物を済ませ、そろそろお昼の時間。
軽く何か食べていこうと飲食店を探しウロウロしていると
一軒のテイクアウトの焼き鳥屋に目が留まった。
陳列棚を見ると、そのバリエーションの豊かなこと豊かなこと。
今時はこういった店でも様々な串を楽しめるのはとてもありがたい。
たれの照りが美味しそうにきらきらと輝き、空腹も手伝って思わずゴクリとやってしまった。
夜であればビールをキュッとなるのだが、良い子のお昼はどうしたものか?
ここはやはり炊き立ての銀シャリがピッタリ!
—帰って焼き鳥丼にでもするか
とここで何を選ぶかとなるのだが、僕にとって焼き鳥といえばコレしかない
〈せせり串〉である。
他の部位ももちろん好きで食べるのだが、中でも〈せせり〉が一番である。
一人暮らしをしていた学生の頃、夜更かしをしてどうにもお腹が空いてくると
駆け込み寺のように買いに行っていた焼き鳥屋があった。
いつもなら歩いてすぐのコンビニで済ますのだが、特に故郷の母君より不定期に送られてくる
ありがたい兵糧白米が届いたときなどは、どーにも焼き鳥丼が食べたくなってしまうのだ。
チャリンコにまたがりキーコキーコ、地下道をくぐり5分くらい、線路を挟んだ向こう側にあるその店は
初老のオヤジさんと女将さんそして40代くらいの娘さんの3人で切り盛りする(多分…)
とりたててどうという事もない小さな赤ちょうちんの焼き鳥屋だった。
入口とは別にお持ち帰り専用の窓口があり、注文するとその場で焼きにかかるというシステムだ。
一度くらい店で飲んでみるかと思いながら、ついぞ焼き鳥のテイクアウトに終始してしまったのが
ちょっぴり心残りではある。
いつか焼き上がりを待っていた時に、ちょうど常連らしきサラリーマンが暖簾をくぐり入店した。
開けた引き戸の脇から垣間見た店内には、質素な4人掛けのテーブル席を確認したくらいで
あとは僕の知らない世界。
ただ、その時壁に貼ってあったホッピー¥○○のチラシ
角が破れ色褪せたそれに、なぜかとても切ない気持ちになったのを今でも憶えている。
さて、僕はいつもきまって「とり正肉¥50」を10本買っていた。
1コインで10本!お値打ちである。
当時の相場からすれば、居酒屋チェーンで安く見積もっても1本¥80~¥100
個店の飲み屋なら¥120は軽くしたであろう正肉串を破格の¥50!
貧乏学生のお腹を満たすのに何ともありがたい神!価格設定。
しかも他の焼き鳥屋の正肉串と違い、味・旨味・歯ごたえなどが別物の美味しさだったのである。
一般的には鳥正肉と言えばモモ肉かムネ肉のことをさしていたであろう当時
明らかに違う正肉串の味わいに、僕はすっかり虜になってしまったのだった。
実はコレが僕と〈せせり〉との出会いである。
オヤジさん、どーもうまくやってたんじゃないかなぁ。
当時は専門店でなければ〈せせり〉や〈ぽんじり〉などの通な部位は食べられず
希少でも何でもないそれらの肉の価値は言わずもがな、専ら加工用となり
多くはミンチに消えていったのでは。
かなり仕入れ値の安い〈せせり〉を正肉と称して販売していたことになるわけだが
僕にとっては美味い焼き鳥を安く食べられて言う事なしだったわけだ。
因みにオヤジさんの名誉のためにちょっと調べてみたところ、〈正肉〉とは
「骨や脂肪など余分なものを取り除いた食用の肉の総称」ということなので
〈せせり〉も立派な正肉、偽装していたわけではなかったので一安心、ホッ。
出かける前に炊飯器をセットし、戻ってくる頃にはホカホカごはんが炊き上がっているという具合。
10本の焼き鳥は5本を焼き鳥丼で食べ、残りは次の日用にしたり
ノッテる時はビールでやっつけちゃったりしたことも。
たま~に店が混んでいる時にあたると、オヤジさん焦っちゃたのか生焼けの串があったりしてブー。
そんな時は再加熱して味を付けなおす必要があり、ミッドナイトクッキングの始まり始まり~。
僕が手を加えた方が美味しかったりしてペロッ。
そんなことを思い出しながら、良い子の焼き鳥丼に舌鼓。

ちょっとワサビ効かせすぎちゃったかな、ぐしゅ…。
VALOKAKU🎣