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銀座シリーズ其の弐 金の缶と銀の缶

          松本市梓川に魚釣りが大好きな
          正直者の喫茶店の店主がおりました。
          釣りの季節ともなると、お休みの日はいつも
          恋女房お手製の弁当と味噌汁を持って、梓川に釣りに出掛けるのが
          何よりの楽しみでした。

          その日も朝から川へ出掛け、そこそこの釣果でご満悦。
          お昼になったので、河原にて待ちに待った弁当の時間です。

          店主は、味噌汁にほんの少し七味とうがらしを振り
          ピリッとさせるのが大好き。
          いつも竹で作ったお手製の七味入れを持参しておりました。

          「いただきます」

          にぎりめしを頬張りながら、ポットに入れてきたアツアツのお味噌汁に
          いつものように七味をパラッと その時です。
          朝からの大漁に手が疲れたのか、不覚にも勢い余った七味入れは
          手からスルリとすべり落ち、梓川の早瀬に・・・。
          急流に乗って、七味入れはあっという間に見えなくなってしまいました。

          「あいや困った、お気に入りの七味入れが流された。どうしたものか。」 
          流れを見つめ、途方に暮れることしばし。
          と、何処からともなく声が聞こえてきました。

          「これこれ釣り人よ、いったい何をお困りかな」
          目の前には、いつ現れたのか一人の白髪の老人が立っておりました。

          「実は今、大切にしていた七味入れを、川に流してしまったのです」

          するとその老人は
          「そなたが無くした七味入れはこれではあるまいか?」
          そう言って、金色に輝く缶の七味入れをひとつ差し出しました。

          「いえいえ、わたくしのは、そのような金色の立派なものではありません」

          「ならば、これはどうじゃ」
          今度は銀色に輝く缶の七味入れを差し出しました。

          「いえいえ、そのような銀色の立派なものでもありません」

          「ならば、これか」
          そういって最後に竹製の粗末な七味入れを差し出しました。

          「おおっ!ありがたや!!それがわたくしの大切な七味入れです」
          「でも、どうしてあなた様がわたくしの・・・?」

          「わはははは、愉快愉快!!何と正直な釣り人じゃ」
          「ほれっ この金と銀の七味入れも持ってゆくがよい」

          老人がそう言った刹那、ボンッとけたたましい音が響き渡り
          一筋の雲が天へと昇っていきました。

          店主の前には、金と銀と竹、三つの七味入れが並んでおりました。

          「もしかしたら、あの老人は梓水の龍神様だったのかも・・・」
          「ありがとうございます。ありがとうございます。」
          店主は深く頭を垂れ、何度もお礼をくりかえしましたとさ。

          :この物語はもちろんフィクションです。

銀座シリーズ其の弐 金の缶と銀の缶_e0159392_22164289.jpg


          銀座NAGANO限定 八幡屋礒五郎 七味唐辛子 銀缶
          
          お土産に戴きました。
          ありがとうございました一礼。
by cafevalo | 2014-11-11 23:34 | あれこれ | Trackback | Comments(0)

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