VOL 11  STAND BY ME  part 1

          久しぶりにケースから取り出すと
          それは、ブラスゴールドのボディを鈍く輝かせながら
          不機嫌そうにこう呟いた(ような気がした)

          「随分とご無沙汰だったじゃねーか」
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          スウェーデン オプティマス社製 キャンプストーブ 
          SVEA 123R クライマー(以下スベア)

          どうもSVEAとは、古のスカンディナビアのヴァイキング
          スベア民族のことらしい。
          SWEDENという国名は「スベア民族の」という意味なのだそうだ。
          その名を冠したストーブは正に民族の誇りと伝統の結晶。
          1800年代に生まれ今も現役のロング&ベストセラーストーブなのである。
          このシンプルでリトルジャイアントなストーブとの出会いは
          高校1年の夏にまでさかのぼる。

          毎年夏になると、休みを利用して行われる恒例行事「夏の林間学校」
          ちょうど僕らの年度は信州は蓼科・八ヶ岳周辺を舞台に
          三泊四日の日程で行われた。
          そのメインイベント(…)である北八ヶ岳連峰、東天狗岳登山。
          懐かしい諏訪バスに揺られ、R299麦草峠は白駒池あたりからの
          入山ルートだったと記憶している。
          ペラッペラの体育用ジャージ上下とバレーボールシューズ!?
          透明ビニール合羽という今では考えられないような超軽装備での登山
          やっとの思いで登頂を果たし、山頂で昼食休憩をしていた時の事。
          プライベート山行のお姉さん二人組(今風に言えば山ガールね)に
          淹れたてのコーヒーをご馳走になった。
          その時、彼女達が使っていたストーブがこのスベアだったのである。

          「なかなか味のあるストーブだなぁ」
          僕はスベアの何ともクラシカルな存在感に魅きつけられた。
          当時僕は、イギリスのEPIというブランドのGASストーブを愛用していた。
          ブタンガスのカートリッジ缶を取り付けて使うタイプのストーブである。
          このタイプのストーブは、点火が簡単で火力の微調整もしっかりできる。
          メンテナンスもほぼフリーなので、初心者のエントリーストーブとしては
          最適なのだが、デザイン・機能美といった点では若干物足りない
          更に使い終わったあとの空のカートリッジが、ゴミとなってしまうのも
          マイナスである。
          そんな訳で、GASに替わる燃料のストーブに関しては
          少々気にはなっていたのである。
          (最近は、メーカーがカートリッジの責任回収を行い
          リサイクルに努めている。登山用品店やアウトドアショップに回収箱が
          設置されているので空カートリッジはそこに持って行ってほしい)

          スベアはその小さなボディーに似合わない
          ゴォーという燃焼音を奏でていた。
          バーナーヘッドから立ちのぼる四片のブルーフレイムは、
          あたかも、頂きの風の中、健気にしかも力強く咲き誇る
          美しき青き山嶺の野花のようであった。
          その時スベアは正にストーブのあるべき姿で
          誇り高くそこにあったのである。

          そんな出会いから月日は流れ、ティーンを卒業しようという頃。
          僕はあるものに夢中になっていた。
          オートバイである。
          厳密には「オートバイで旅をすること」オートバイツーリングに。

          リアシートに旅のための衣食住をコンパクトにパッキングし
          オートバイと共に旅に出る、それは風まかせの気儘な旅。
          右手でスロットルを開け、左足で小刻みにシフトアップしていくと
          僕とオートバイは美しき日本の風景の中へと旅立って行った。
          移りゆく日本の自然を全身で感じながら、風に吹かれ、匂いをかぎ
          人とふれあい、食に舌鼓を打つ。
          日が昇ると走り、沈むと眠る。
          ロードマップを頼りに今宵のキャンプ地を決め、テントを張る。
          焚火の火が落ち着くと一日の終わり。今日の旅に祝杯をあげるのだ。
          明日はどんなシーンが僕を待っているのだろう。
          そう、オートバイの旅は決して日常を引きずらない
          自由な旅なのである。

          僕の旅は専らロングツーリング、しかも野宿というスタイルであった。
          当然自炊をしながらの旅となる。
          お湯を沸かしてコーヒーを淹れたり、調理をしたりするのに
          キャンプストーブは必要不可欠。
          もちろん焚火も使うけれどいつもというわけにはいかない。
          どしゃぶりの雨の夜もある。
          そもそも焚火は自然へのインパクトが大きい行為なので
          場所を見極める必要もあるからだ。
          果たしてオートバイツーリング用のストーブはどんなタイプが
          適しているのか?
          ポイントは燃料である。
          長い時には一ヶ月以上も旅を続けることもあるスタイルでは
          途中での燃料調達が容易でなければならない。
          先述したGASストーブであると、取り扱いが楽である反面
          予備のカートリッジを日程相当キャリーする事は非現実的。
          当時は、専門店でしか販売されていないことが多く
          旅先でこまめに補充することも困難であった。
          となるといつも手元にある燃料が使用できるものがベストとなる。
          つまりオートバイのガソリンが使えることが合理的な訳である。
          スタンドでの給油時に、チョイとストーブ用の燃料ボトルに補給。
          不測の事態にはオートバイの燃料パイプから直接もらう事も可能である。
          実際僕もそうやって何度か救われた。
          キャンプ用のガソリンストーブの多くは
          精製度の高いホワイトガソリン(白ガス)を使うタイプで
          燃焼性が良く煤もほとんど出ない。
          自動車用のレギュラーガソリン(赤ガス)をそれらに使うと
          匂いや多量の煤が発生して、ジェネレーター(気化筒)が詰まり
          トラブルを起こすケースが多かった。
          このスベアは、一応ホワイトガソリン専用であるけれど
          構造がシンプルなので、レギュラーを使って調子が悪くなった場合でも
          その場で分解掃除をして、復活させることが可能と独自で判断
          (注:あくまでも独自に!ですからね)
          点火には固形燃料を使い、タンク内の圧力を高め強制的に気化させる
          プレヒートが必要だけれど、それも慣れれば気になる程の事ではない。
          そんな理由で僕が選んだストーブがこのスベアだったのである。


                     part 2 へ続く。
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by cafevalo | 2012-10-12 23:08 | モノ物語り | Trackback | Comments(0)

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